2014全日本カート選手権 西地域 第1戦は、3月29~30日の日程で、滋賀県・琵琶湖スポーツランドにて開催された。
今シーズンの全日本の初レースということで注目が集まった。気になるエントリー台数は、FP-Jr.CADETで17台、FP-Jr.で25台、地方戦FP3で6台、地方戦FS125で16台、全日本FS125で17台と例年とほぼ変わらないドライバーを集めた。特に昨シーズンからFP-Jr.の参加台数は多く、激戦が予想される。また、FS125も全日本・地方合わせて34台と盛況だ。
ハラダカートクラブ(FA-KART RT +HKC)からは5名のドライバーが参戦。金曜日・土曜日は春の陽気を感じさせる晴天で、パドックにはTシャツ姿で過ごす関係者も見られた。しかし、日曜日になると天候は一転し、朝は雨は少ないもののどんよりと曇り空。朝からドライバーはウェットセッティングに勤しみ、公式練習・公式予選に備える。
公式練習は各クラス10分間。まずは、タイヤ空気圧、シャーシセットを確認しながら、さらにドライバーはドライビングの修正を行い、体をウェットコンディションに慣れさせていく。
FP-Jr.CADETクラスには昨シーズンの同クラスランキング10位の伊藤琢磨(FA-KART/YAMAHA)が参戦。伊藤は昨年よりも落ち着いた走りをしており、悲願のチャンピオンに向けての1戦目を走り出す。ここ琵琶湖は伊藤にとって不得意なコースではないのだが、ギア比などいまひとつ決まったものが見つからず、思ったようなタイムを刻めない。公式予選は10位で終える。トップとの差は0.8秒ほどだが、安定したラップを刻むためには足りない部分が多い。予選ヒートは雨が強くなったため1列でのローリングとなる。ここでもペース不足に悩まされ、ラップタイムが向上できず苦しい展開。それでもバトル強さは発揮しており、2つポジションを回復し8位フィニッシュ。決勝での上位への最低限のポジションを獲得した。
決勝ヒートは雨が弱まり通常の2列ローリング。スタートの瞬間6位に浮上し、さらに上位を目指すが、この決勝でもペース不足は解消されず、前方グループに引き離されてしまう。後方ではアクシデント等があったため、安全なマージンは持っている。しかし、伊藤よりもかなり速いペースで追い上げてきた選手にパスされ7位に後退。レースはこのまま続く。上位はところどころ激しいバトルをしているが、リタイヤするドライバーは現れずそのままフィニッシュ。7位となりなんとかポイントは獲得したものの、ランキングでは大きく遅れをとってしまった。
FP-Jr.クラスは地元滋賀県出身の大橋優樹(FA-KART/YAMAHA)が参戦。これまでカートランド三重のSLレースと、鈴鹿・琵琶湖の数レースしか経験がない大橋は、この1年でどれだけ成長できるかが鍵となる。ウェットレースは経験があるので、ある程度の自信を持って挑んだ公式予選。シャーシセットアップはまずまずでいいタイムが刻めそうな雰囲気があったが、他社に阻まれたこともあり総合で17位となる。続く予選ヒートでは抜群のスタートを切り、大きく順位を上げるが、ファーストラップの3コーナーで、前方のアクシデントに巻き込まれストップ。絡み合ったカートを足で蹴って解除し、戦列に復帰する。しかし、なかなかペースが上がらず直前のドライバーに引き離されてしまう。ついには後方からトップの選手が迫っていたため、青旗排除となり予選ヒートを23位で終えることとなった。レース後、右タイロッドが大きく曲がっており、ペースの上がらない原因が見つかった。
決勝ヒートは後方23番手からのスタート。ここまでくると失うものはなく、スタート直後から攻めの姿勢でレースを展開していく。後方グループながらまずまずのペースで戦う大橋。しかし、回りは西地域から集まってきたツワモノばかり、まだまだレース経験の少ない大橋にとってはすべてが強敵である。それでも徐々に回りとそん色ないペースで走り出したころ、突然エンジンがストップ。それはドライバーでどうすることもできず、リタイヤとなってしまった。最低限、完走をしたかった大橋。しかし、今回のレース経験は次回のレースでも活かされるであろう。
地方選手権FS125クラスには岡野将季(FA-KART/IAME)が参戦。岡野は諸事情により今シーズンもスポット参戦の予定。だが、今回のリザルトによっては全戦参戦の可能性もある。公式練習はまともなタイヤがなく、早々に切り上げ公式予選へ。シャーシセットアップはまずまずであったが、朝の公式練習でいい状態で走れなかったことがドライビングに景況を出してしまい、12位という結果に終わってしまう。続く予選ヒートでも思ったようにペースを上げることができない。ドライビングは改善してきたものの、根本的なグリップ不足に悩んでしまい、序盤でバトルをしていたドライバーに遅れを喫してしまう。しかし、地方戦FS125の予選ヒートは豪雨となり、かなりの荒れたレースなり、上位陣が次々とスピンアウトやアクシデントによりリタイヤ。ペース不足ながらも安全に自分のペースを守りきった岡野は、6位でフィニッシュすることとなった。予選ヒート後はシャーシセットを大幅に変更し、予選でのグリップ不足を解消させる。
決勝ヒート。お昼ごろから雨は止み、晴れ間が見えコースはどんどん乾いていく。もしかするとドライでいけるのではと思わせる状況。しかし、直前の決勝レース中、かなり弱いものの雨が再び落ち始める。一旦はドライセットに振るものの、最終的にチョイスしたのはウェットタイヤ。これが吉と出るか凶と出るかはレースが終わってみなければわからない。しかし、岡野にはそれ以上の試練が待ちうけいていた。ダミーグリッドに並べるマシン達。ドライタイヤでギャンブルに出るドライバーも数名。グリーンフラッグでローリング開始の瞬間、岡野のエンジンが始動しない。直前の始動確認では問題なかったが、まったくエンジンに火が入らない。ピットロードに戻され、メーカーのサポートもあり、なんとかエンジン始動。さらにキャブレターにガスが溜まってしまいスピードが上がらない。ローリングはそのまま続き、いよいよスタート。岡野のエンジンは息を吹き返しスピードに乗る。スタートは集団から半周遅れとなった。その後は雨が強くなり、レインタイヤが有利な状況に繋がっていく。この時点でドライタイヤ勢は思うようなレーシングスピードに乗せることなく、トップグループはレインタイヤを履いたドライバーが占める。岡野はその有利な状況を味方にペースアップ。水溜りに足をとられコースアウトするドライバーも多くいるなか、着実にポジションをアップしていく。そのままレースは終盤戦に突入。岡野のペースはまずまずで、ついにはドライタイヤ勢に追いつくことになる。路面コンディションはウェットであるため、岡野は難なくこの集団をパス。そして荒れたレースにチェッカーが振られる。岡野は序盤の苦戦を克服し、7位でレースを終え、ランキングポイントを獲得することに成功した。
メインイベントとなる全日本カート選手権のFS125クラス。このクラスには昨年から引き続き橋詰拓馬(FA-KART/IAME)が参戦。さらに昨年の全日本カート選手権KF2最終戦で2位表彰台を獲得した稲寄速人(FA-KART/IAME)もフルシーズン参戦する。橋詰は金曜日から走行を始めたものの、事情により練習走行がほぼなしに等しい状況であったため、ラップタイムに元気が無く思うように走行できない。それでも果敢に周回を重ね、土曜日の走行ではまずまずのタイムをたたき出す。稲寄は土曜日入りし、シャーシやエンジンのテストを進める。この時点で日曜日が雨と予想され、走行終了後はウェットセットも相談する。迎えた日曜日は予報どおり雨。公式練習で元気だったのは橋詰。6位まで表示するラップボードにゼッケン27を載せ、ウェットでの好調を披露する。稲寄は思うようにタイムが伸びず、シャーシのセットを見直すこととなった。続く公式予選でも橋詰は好調をキープ。序盤か掲示板に載り、シングルポジションは確実と思われた。しかし、計時の中盤、タイヤトラブルに見舞われストップ。タイムが出る後半を逃してしまった。それでも橋詰は10位を獲得。稲寄は見直したセットアップが機能せず、15位に終わる。続く予選ヒート。橋詰はまずまずのスタートをするが、オープニングラップの後半、アクシデントに巻き込まれリタイヤ。決勝は後方からの追い上げを余儀なくされる。稲寄はシャーシが若干向上しペースアップ。バトルを繰り返しながら周回する。しかし、後半アンダーステアが酷くなり、ポジションをキープするのが精一杯。結果は10位となり、ギリギリのTOP10となった。
他のクラスの決勝ヒートが始まるころ、雨は上がり太陽がうっすら出てくる。しかし、コースは一旦乾いたかに見えたが、直前のクラスのときにまた雨が降り、結局ウェットコンディションでのファイナルとなる。この状況で2名ともにシャーシセットはウェットよりとはいえ雨が少ないほうが有利となる。10番手スタートの稲寄はスタートで2ポジションをアップの8位でオープニングラップを終えると、ペースの上がらないドライバーを1台パスし7位に浮上。まずはこのポジションをキープする。橋詰もスタートから果敢に攻め、8位争いの集団に追いつく。各地でバトルがあるなかレースは中盤戦に。稲寄は前のドライバーよりはペースはいいが、後方のドライバーはさらに良く攻め立てられる。攻めと守りを同時に行う稲寄。橋詰はその後方で9位争いを展開。が、その瞬間橋詰にマシントラブルが発生。ここでリタイヤを余儀なくされる。後半に向けさらにペースアップを狙っていただけに悔しいトラブルとなった。稲寄は逆に予選同様のアンダーステアが酷くなり、ついには8位にポジションダウン。6位争いから遠ざかってしまった。しかし、その6位争いが激化し2台がペースダウン。そのバトルを尻目に再び稲寄が6位争いに加わっていく。そして1台をパスし再び7位に浮上。レースは終盤に差し掛かる。稲寄は7位をキープしたいが最後の最後に1台パスされ8位でフィニッシュ。その稲寄のマシンのフロントはほとんど効かないくらいに消耗していて、この苦しい状況でポイントを獲得したことがチャンピオンシップに影響してくるであろう。
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